実務翻訳のススメ



このコーナーでは、翻訳に関するコラムや、受講生からの質問など、実務翻訳のスキルアップにつながる内容をお届けしてしています。

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今日から東京はぐっと気温がさがり、秋雨に季節を感じます。
さて翻訳にまつわる各職種担当者からのミニコラム「実務翻訳のススメ」第30弾。
今回は、営業担当者が執筆いたしました!

翻訳は時として命を削る鉋(かんな)

通訳で有名な故米原万里さんも書かれていたが、翻訳とは、完成度を高めようとすればするほど、割に合わない職業のような気がする。専門職とは、とかくそういうものかもしれない。
各業務にまつわる話や、訳者を目指す人たちへのアドバイスは経験豊富な同僚たちに任せて、私は自身が経験した字幕翻訳について回想してみたい。
20年近く前、アルバイトで英BBC制作による環境関連映像の字幕翻訳をしていた。私にはいつも台本のないものがまわってきた。インタビューや会話が少ない作品や一般的な内容の場合は翻訳もはかどり、楽しむ余裕があった。携わった各作品の詳細は忘却の彼方であるが、忘れられない作品がひとつある。海洋微生物を紹介する映像だ。
微生物の生態、素晴らしさ、神秘さ、新しい発見を学者が紹介する番組だ。地球のワンダーに胸が躍る。しかし、翻訳する段でつまずいた。ラテン語やラテン語化したギリシャ語の微生物の名称がわからないのだ。耳から聞いた音をあれこれ綴っては調べてみる。CをKに変えてみる。「シ」と聞こえたらschと綴ってみる。語尾をaeとしてみる。今ほどインターネットの情報が豊富ではなかった時代の話だ。大きな本屋さんの生物学コーナーに映像音声を持参し、幾通りもの綴りの組み合わせを辞書で探した。新しい発見ともなると、印刷されて久しい書籍では正誤確認のしようもないのでジャーナルにも手を伸ばす。納期までに微生物名が判明するか心配で気持ちが焦って毎晩眠れない。
訳者は多かれ少なかれ、納期を守るために日々孤軍奮闘している(はずだ)。質のよい翻訳を期日内に仕上げる彼らの努力には心から頭が下がる。
アドレナリン全開で納品直前に微生物名が判明したときは鳥肌がたった。納期も滑り込みセーフ。5分の映像字幕翻訳が1本5000円だったので、我が時給は250円未満だったと記憶している。調査と翻訳に20時間以上かかった計算だ。
命を削る思いと深い感動を味わった経験だったのに、私を悩ませたあの単語、もはやまったく覚えていない。

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